私より若い人は皆若い、とここ数十年言い続けてきた。事実私が会長になった平成二年は、私より年上が半分以上だったかと思う。あれから二十年以上経ったとはいうものの、全体の年齢がそのままアップしていることはいうまでもない。 私は […]
発刊五十年目はわれながら重いと思う。小坂先生から二度三度請われて昭和四十二年に創刊したのであるが、今考えるとよくまあ無茶な決断をしたものだと思う。当然準備に一年はかかった。 その当時、私は結婚したて、子供出来たて。わが家 […]
私が年賀状を突然書かなくなったのは六、七年前からか。それ以来一枚も書いていない。先輩の先生方にはもちろんのこと、同輩や門下の方達にも失礼極まりないと思いながら、やめた年の胸のつかえがとれたあの爽快さが忘れられず、本当にそ […]
作品と実用の文字とは常に一致させてほしいと願っている。それは書人としてあたりまえのことだろう。全く違う人を見るとがっかりする。ペンでも鉛筆でもメモ一枚を見れば書をやった人かどうかは一目でわかるように書けばよい。上手下手は […]
私は書作品の原稿を小さく書いて、それを大きな紙に拡大したとき、そのままの形で書けない。原稿は書くが小さな紙には書かない。同じ大きさの同じ紙に書くことにしている。それでもあたりまえのことであるが本番で原稿通りに書けたことが […]
手作業のほとんどのことは機械がしてくれるようになりつつある。だから、これは手仕事で作ったものですよ、とわざわざ説明している。とりあえず服地ということにしよう。よく見るとたしかに手仕事のよさ、時間をかけたものの良さが伝わっ […]
筆を執って書く瞬間、たとえば最後の縦画をどの辺に引くか、最後の点をどこに打つかなどその瞬間瞬間で決めながら書き進めてゆくのが書の醍醐味ではなかろうか。書く前にイメージを持って書く字もあるが、上や右隣の字のスタイルを見て瞬 […]
「田邊古邨全集—全八巻」の推薦文を頼まれた。数人のうちの一人らしい。個展が終って一息ついているころだったが、頭の中が空っぽで、ちょうどそのころ発症した帯状疱疹もチクチクしはじめていた。 体調不良を理由に五月初 […]