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見る目・感じ取る眼

人と出会った時に皆さんはどこを見ますか。私はまず全体、次に顔、足元、持ち物などです。ところが別れた後、その人の服装や持ち物など細部を問われてもあやふやで答えられないことが多くあります。第一印象として「カッコイイ」とか「キレイ」だとか思っても、何となくであって記憶に残そうと深く具体的に見ていない証拠なのでしょう。

 また人と会話する時には顔を見て話しなさいと言われます。それは表情によって会話の内容をより深く感じ取ることができるからだと思います。言い換えれば話さなくても、表情だけでその人の意思が汲み取ることができることもあるのです。

 書作品に置き換えて考えると同様のことが起こっているようです。まず書作品を鑑賞する時には、上手、そうでないは何となく感覚的に判断していますが、後でその作品のどこが良かったかを問われても具体的には何も記憶に残っていません。いくら良い作品や本物の古典を見ても記憶に残らなければ無意味なものになってしまいます。そうならないためにも作品を鑑賞する方法として、見る力を養い、より深く感じ取ることが必要になります。

 書作品は自ら話すことはできませんが、その書風や運筆によって語りかけてくるものです。鑑賞する我々がそれを感じ取らねばならないのです。作品全体から発する雰囲気を味わい、感じ取ることが大切なのです。そして文字の形や線質、紙、筆、運筆方法など細部にわたって分析し、追体験することによって自身のオリジナル作品作成へのステップへ繋げたいものです。

 作品づくりは先ず真似ること、つまり臨書から始まります。作品の良し悪しがわからなければ良い作品を書くことは不可能です。またどんな線が強いかなど具体的に理解できなければ強い線は表現できません。臨書によって表現方法を鍛錬し、本物の作品を鑑賞することによって見る目を養い、感じ取る心を身につけてください。そして魅力ある作品づくりの糧にしてほしいと思っています。

山本 大悦

(2022.7号より)

 
   

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