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徳島と成田山

去る2月から3月にかけて二つの展覧会を拝見した。
一つは徳島県立文学書道館の「書道特別展 江口大象-おおらかな書の世界」展であり、もう一つは成田山書道美術館の「収蔵優品展 小坂奇石と江口大象」展である。

徳島は、江口先生やご遺族寄贈の青年期から遺墨出品となった日展、璞社書展出品作までバランスの良い展観で、とりわけ璞社書展の超大作は圧巻であった。また、徳島の直心会展や地元の各社中展への賛助出品作、個人収蔵の作品など地元ならではの企画もあり楽しめた。また、図録があるのも有難かった。特に作品毎に作品名、寸法、制作時年齢が入っており、振り返りも容易である。また、山本大悦璞社会長の「江口大象先生の自選作」の一文があり、興味深く拝読した。

成田山は小坂先生、江口先生の師弟展がメインであり、作品は小坂淳子さんや江口先生が寄贈されたものである。小坂先生の作品は主に徳島の文学書道館、大阪の法樂寺、長野の驥山館に収蔵されているが、成田山も二十人展、日展、璞社書展の出品作があり、内容、点数ともに充実していた。江口先生の作品は璞社書展出品の超大作や日展特選、会員賞受賞作、小坂先生に師事する契機となった高2の佐賀県展出品作(参考にした小坂先生の昭和23年の日展作(第2作品))等もあり、なかでも徳島同様璞社書展出品の超大作は誠に壮観であった。

また、小坂先生の書の師、黒木拝石、尊敬する書人、川村驥山、漢詩、漢籍の師、長岡参寥、土屋竹雨、黒木門の木村知石、三室金羊、小坂門の阿部醒石、松永晹石等の作品が展示され、その系譜をたどる上でも有意義であった。両展を拝見して改めて感じたことは、小坂、江口両先生の書は、小坂先生が書源創刊の辞で述べた、「穏健中正な態度をもって学書の大道を歩む」という、伝統(古典)を踏まえた本格、本物(王道)であり、存在感と説得力が際立っていること。

小坂先生は刻苦鍛錬を経てその才能を開花させ、さらに確信にまで高めた信念の人である。その確信は、気韻生動、直筆蔵鋒、不均整の均整等の自らが開拓した書の方法論に裏付けされ、その生き様は璞(あらたま-磨くほどに輝きを増す玉(ギョク))の如くである。自らの社中を璞社と名付けた意味も再確認できたこと。

江口先生は天性の無類の才筆であるが、若くして小坂先生の書の質(格調)に触れたことから、単なる達筆ではなく、その質を踏まえ、闊達自在な中にも、抑制の効いた自らがいう「品の良い」独自の書を完成させたこと。また、「亡くなる直前まで、老境を感じさせる筆致の衰えは微塵もなかったこと等である。
また、成田山新勝寺では、現代書家の門標、木額等も拝見出来、その圧倒的スケールと気迫に書の持つ力を感じ、胸のすく思いであった。
今回は両先生の偉大さを再認識する絶好の機会となった。

佐藤芳越(書源2022年6号より)

 
   

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