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朝日現代書道二十人展

東京の会場は今年から上野の松坂屋から日本橋の高島屋へ移った。それと第六十回の記念を機に歴代出品者の中から出品回数の多い十五名を選んで各一点ずつを陳列したことも重なってか、入場者が今までにないくらい多く、身動きがとれないほどであった。会期中の数日間は書展には珍しく入場制限までしていたとのこと。

会場で「墨」の太田さんから「江口さんの作品は楽しくてしようがないように見えますね」といわれたのは正直うれしかった。あんまり枚数は書いていないでしょう、とは裏の言葉か。
その通りで「楽しさが他人に伝わるような作品」を書きたいのが私の理想で、もう七十も疾うに越して作品づくりに必死になるのは体力との相談もあって、書けば書くほど良くなるとは限らないと思った方がよい。それより書くときの意気込み、楽しさなどが作品に出ている方が観賞する人の心を和ませるか、完璧を期して目一杯の作品より書きたくてうずうずする気持ち、これは他のどんな職種にも共通するとは思うが、嫌々やっているものと嬉々としてやっているものとの違い、何事にも興味を示す時期の子供の目を見るがよい。書であれば、できることならあれをそのまま作品に出したい。

私は子供のころから書をやめようなどとは一度も思ったことがない。好きで好きでしようがないのである。作品に滲み出るはんなりとした色気、自由の精神が何よりも必要で、今回大先輩の先生方の作品にもそれをつくづく感じて来た。

大阪の会場は展示場も祝賀会会場もゆったりしていた。名古屋展はもっと広いか。
私はのんびり十五日の金曜日と十七日の日曜日に「解説」といいつつ雑談を少々。

江口大象(書源2016年3月号より)

 
   

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