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創作は「寡字の部」から

  • 投稿日: 2023-10-04

  • カテゴリ: 未分類

2023年10月 山本大悦

 お気に入りの語句を、自由な形式で、思いのままに書くことができればどんなに楽しいことでしょう。私たちは 書の愛好家であると同時に作家でもあります。 手本に頼らずオリジナルの作品を自在に書くことこそ、皆の理想と するところだと思います。 そんなことは分かっているが、私には無理だと思っている方がほとんどではありません か。それは書作品の創作方法が分からない、あるいは知ろうとしなかっただけです。 創作する方法さえ分かればど うにかなるものです。

 「書源」には様々な部門がありますが、それらを闇雲に書くのではなく目的を持って取り組んでください。その 中で冒頭に述べた自在に創作をするという理想をかなえるための手順として「書源」にある寡字の部に注目してく ださい。寡字の部は漢字二文字の課題を半紙に創作する部門ですが、「書源」にはすでに古典から集字した例を書 体別に示してくれています。 初歩の方はその例を参考に書いてください。ベテランの方は自分で字書を使って古典 から集字してください。 自ら字書を開き調べる行為が大切です。 手間をかけることで強く記憶され、深く身につく のです。

 古典を集字するポイントを少し述べます。 寡字の部の場合は、二文字の書風を合わせることです。そのためには、 先ず古典や筆者が同一か同時代のものを選ぶことになります。 ところが古典や時代を拘り過ぎても駄目です。 大切 なことは二文字がバランスよく半紙に収まるかです。そのため古典が違っていてもよい場合があります。また字書 にない文字は偏と旁などを別々に調べ、合成することもあります。いずれにしても自分で字書を使って調べてくだ さい。そして候補になる文字を数種類ノートに抜き出します。その場合、ノートはゆったりと使い、鉛筆で構いま せんので細部までよく観察して丁寧に少し大きめに書き写してください。 次に手本になる原稿作りです。 二文字の バランスを考えながら組み合わせていきます。 どんなスタイルの組み合わせが収まりよいのか、試行錯誤しながら 鉛筆で構いませんのでメモしながら縮小版の原稿を作ります。この行為がオリジナルな創作をする重要な部分です。 最後に原稿を見ながら半紙に墨で書いてください。

 寡字の部は二文字ですが、半切や大作になれば文字数が多くなります。 文字数が増えるほど連続する文字と文字 との関連や隣り合う文字の関係が複雑になり、それだけ多くの配慮が必要になります。いずれにしても寡字の部は 二文字ですので創作するための最小限の基礎がここから学べるのです。お気に入りの語句を自在に書きこなせるよ うになることを夢見て、コツコツと地道に取り組んでほしいと願っています。

 
   

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