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絡み合う様々な要素

  • 投稿日: 2023-06-27

  • カテゴリ: 未分類

山本大悦(2023.07号)

 地方での璞社・書源錬成会が四年ぶりに実施された。 三月に東北、四月には徳島と岩国において、 コロナウイルス感染症対策をとりながらの開催となったが、対面での錬成は充実した有意義なものになった。書は形と線で成り立っているが、字形は概ね印刷物でもわかるが、線質は実物を見るに限る。更にそれがどのようにして完成したかを理解するには、書いているところを見るのが一番である。そういう意味で対面での錬成会は意味のあるものといえる。

 さて、今回三か所の錬成会場のうち二か所で「上手に書く秘訣」を問われた。 誰しも知りたいことであるが短い言葉で端的に答えることは難しい。 スポーツも同様だが書作品を書くという行為は実技を伴うので、反復練習によって技術を身につけるしか方法はない。何枚も何枚もたくさん書くことだ。しかし闇雲に書いて枚数を費やすだけでは駄目で、考えながら的を射た反復練習をすることが重要である。

 まず、良し悪しを見極める目を持つことである。 展覧会で作品を見て批評する訓練をするとよい。また稽古場や錬成会場で先生の添削をしている姿やす言葉をじっくり観察してほしい。 案外そんなところに良し悪しを見極めるヒントがあるかもしれないと思っている。

 次に、字形や線質といった技術の向上は、日頃から古典を臨書し、その積み重ねから学ぶべきものである。決して好き勝手に書いてはならない。 古典の学習は書作全ての基礎になるので怠ってはならない。線質については一生をかけて鍛錬をし続けなければならない。しかし、今すぐにでもできることもある。例えば、太く書きたければ筆圧を加えて太くするのではなく、太い筆を使えばよいし、にじみの強い紙で書きにくい場合は墨量を調節して書くのではなくにじまない紙を使えばよい。つまり道具の特性を知り、自分が表現したいものにどのような道具が適しているか見極め、道具を味方につけることで解消できることがある。言い換えれば、いかに柔軟に対処できるかということである。

 毛筆で書かれた一本の線は、様々な要素が絡み合ってできている。その点画が組み合わさり文字になり、さらに文章になれば複雑さが増幅する。 それだけに書は多彩で千変万化な作品ができるのである。 上手に書くためには、複雑で様々な要素を一つひとつ紐解き、理解し表現できる必要がある。それができれば、 書は楽しくどんどんその魅力に取りつかれるはずである。 書はわかればわかるほど面白くなっていくのである。書を学ぶ皆さんは、古典の学習を怠らず、筆や紙の特性を知り、頭を柔軟に、的を射た考える反復練習をし、「書は楽しい」と思えるようになるまで、根気よく努力を惜しまないで続けてほしいと願っている。

 
   

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