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開館20年

 小坂奇石作品の最大の収蔵数を誇る徳島県立文学書道館が昨年10月に開館20年を迎えた。誠に目出度いことである。
全国初の文学館と書道美術館の複合施設として2002年(平成14年)10月に開館した。

 開館に至った経緯については当時尽力された多くの諸先輩が亡くなられた現在定かではないが、書の方では、奇石作品の寄贈を前提に当時徳島大学におられた東南光氏が中心になり県やマスコミへの働きかけに尽力され、徳島の直心会(奇石門下の会)や璞社がバックアップするという形で進んで行ったのではないか。小坂先生に奈良教育大学で薫陶を受けた東氏の師恩に報いんとする熱意とその行動力に負うところが大きかったのであろう。父奇石の顕彰に情熱を燃やされていた小坂淳子さんも支援を惜しまなかった結果、実現したのではないか。また、県も理解を示していただき、それが今日まで継続されていることにも大いに感謝したい。

 同館では昨年10月22日から1カ月間「開館20年の歩み」展が開催された。毎年の文学と書道のイベント内容や関連ポスター、資料、出版物が展示された。書の方では毎年の小坂奇石展の他にも間断なく企画展や講演会、講座が開催されてきたことがわかる。会場に展示されたポスターは壮観であった。小坂奇石展のポスターはいずれも迫力と品格に満ち、他にも赤羽雲庭展等目を引くものが多かった。県出身者の私としては、徳島の書家を採り上げた「戦後70年回顧・とくしまの書」展、田中双鶴、荒井天鶴、富永眉峰、久保幽香等の各展は地元の先達書家を再認識する上でもありがたい企画であった。

 20年の歴史は館を運営する歴代の館長はじめ学芸員やスタッフの方々の並々ならぬ企画運営努力の結果であり、改めて敬意と感謝を申し上げたい。
 館が定期的に発行する「展覧会・講座のご案内」や「ことのは」はいつもイベントのチェックと振り返りの意味でも拝見している。内容は実に盛りだくさんで、それだけのイベントが実施されているということである。「ことのは」の「館長室から」もいつも拝読、愛読している。最新号では、同館の20年を支えてきた文学の瀬戸内寂聴、書の小坂淳子両名誉館長を喪った現在、新たな10年を実りあるものにしなければ、と決意を述べておられる。

 昨年11月から、開催されている「秋・冬の書道収蔵展」も拝見した。菘翁、梧竹、春洞の他に昭和、平成で活躍した書家の作品は誠に見応えがあった。幕末に活躍した徳島出身の貫名菘翁と並んで小坂先生の古稀記念個展時の「清虚」の大字があった。菘翁と並んでの展示に小坂先生も我が意を得たりであろうと思う。

 文学書道館は書では中林梧竹、小坂奇石の収蔵に一大特色がある。また、貫名菘翁の出身地でもある。書道美術館としての支柱を堅持しっつ、徳島から全国への書道文化発信基地として、ますます発展されんことを切望している。全国的にも恵まれた設備、環境であり、地元の方々や璞社の皆さんにはもっと足を運んでいただきたいし、私も帰省時等には従来にも増して立ち寄らせていただきたいと思っている。

佐藤芳越(書源2023年3号より)

 
   

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