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継志

第60回記念璞社書展の出品作は「継志」と書いた。先人の志を後世に継承するという意味である。
記念展のテーマが「― 新しい干支への出発 ―『飛翔』」となり還暦を迎えたこともあり、再出発をするために気概を込めて撰文をした。江口先生が亡くなられた今となっては、一段とこの言葉が重くのしかかるように思える。

璞社発足にあたって小坂先生は産みの苦しみをされただろうし、江口先生は継承する苦労をされたに違いない。江口先生は常々「璞社繁栄のために」という言葉を口にされていた。アットホームで和やかな雰囲気を持つ璞社のカラーは江口先生の人柄そのものである。先生は多方面にどれだけ気遣いをされていたことか。それは弟子に対しても同様で、いつも笑みを絶やさず穏やかに接しておられた。お稽古では駄目だしをするより褒めながら長所を伸ばす指導だった。一方、自身の書作に当たっては拘りが強く、若い時は相当練習を重ね書き込まれたようだが、晩年になれば草稿は頭の中で練り、書いたとしてもメモ程度で、仕上げは極めて少ない枚数で書き終えることに務めようとされていた。それだけ集中力を持ち、真剣な書作態度だったといえる。まさに「他人に優しく自分に厳しく」を実践しながら璞社を育ててこられたのである。江口先生の人生は璞社と共にあったといっても過言ではない。

今年から私は璞社会長として就任させていただくことになったが、「継志」は決して容易なことではない。小坂先生が書源巻頭言などで示された崇高な思いの実践は容易くはないので長期戦で取り組むとして、先ずは今まで通りにホンワカとした和やかな璞社を継続させることから始めたい。昨年は世界中が新型コロナウイルスに翻弄され、何もかも暗く沈みがちであったが、今後は璞社が率先して明るい話題を発信できるよう前向きに取り組んでいきたいと思っている。璞社会員、書源会員の皆さんのお力添え、ご協力を切に願ってやまない。

すべては璞社繁栄のために。

山本大悦(書源2021年1月号より)

 
   

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