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年末閑話

 慌しく過ぎ去った1年間であった。

 今日は11月6日。数日前やっと20人展作を書き終え、ひと息ついているところだが、これで今年が終わったわけではない。明日から1泊2日の錬成会、そのあと通常の事務以外に岩手県での講話、日展の当番、璞社書展、書美術振興会在外公館作品式典、上田渓水遺作展、璞社三省会書展と続いて平成21年が終わる。そのまた1年前は、日展審査、山本大悦君の特選受賞、そして私の体調不良などでやはりバタバタと過ぎて行った。この号が出る頃私は75歳直前で、高校時代の同窓会などに出ると、忙しくしているのはほんの数人のようで、一種不思議な感じである。

 先号に掲載された今年の璞社書展作品は、そんな私の生活そのもので、大変慌しく見える。「まだこれくらいの体力はあるぞ」と誇示したい気持ちがあったのは事実であるが、それが前面に出すぎてカラ廻り上滑りの作品になってしまったと反省している。「書源」掲載前に写真を見せてもらったのだが、見るからにあれは忙しすぎる。あの日もう1日日程にゆとりがあったので、チラリと翌日再度書くべきかどうかの思いがかすめたのであるが、字配りは全く違っても雰囲気が変わる予感がしなかったし、第一体力が2日続く自信がなかった、といった方が正しい。

 20日程過ぎたころ、1字加字があることを見つけてくれた人がいる。脱字は多いが加字は珍しい。言われるまで全く気付かなかった。前の方だし、最後の1枚だけ書き直して「加字があります」と書くのもなあ-。あれからすぐ表具屋へ渡したので、すでに表具の作業にかかっているのかもしれない。エイッ点でも打っておくか(古人は加字の場合たいていいらぬ文字の右側に点を打ってすませている)いや点もいらぬ、見付けた人が何人いるか、など不遜なことを考えたり-。結果、どうでもいい、失敗反省の文をここで書けばいいのではないかと、いつもの私らしい安易な対処でケリ。

 75歳にもなるんだから、もっと行動にも言葉にも重みを、文章も軽い、と他人から指摘されるまでもなく常々自分自身で思っている。ただ性格は今更変えられず、従って右のことは「考え、心にとめておく」程度で、実行はほぼ無理なのではなかろうか。

 これは正月号の巻頭言である。この11月に、そらぞらしく「明けましておめでとう」と書くのがいやで、ついこんなふさわしくない題材になってしまった。平成22年も皆さんお元気で、書の道に励んで下さい。

江口 大象 (書源2010年1号より)

 
   

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