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夢の中で

十一時過ぎ、テレビを消すと一瞬にして部屋が静かになる。もの音一つ聞こえない。もし天窓に雨粒が数滴あたるとそれがよく聞こえる。
さて週遅れの週刊誌でも読むか。もちろん読みたいページだけを読むので二時間もあれば一冊読める。毎回楽しんでいるのは週刊新潮、五木寛之さんの「生き抜くヒント」。一カ月に一度の巻頭言でも四苦八苦しているのに毎週はさぞかしいや相手は作家だ、と自分を慰めている。が、やっぱり大変だろう。
そのほかにいろいろ愛読コーナーはあるがまあこれ一つにしておこう。しかし、どの文章でも始めの十行ほどが大切で、私など見出しに釣られて二、三行読んで「試合放棄」してしまうものがたくさんある。

さて電気を消す。私なりの瞑想タイムにはいる。が、それを翌日まで覚えていることははぼない。眠りながら何を考えていたのか、翌朝になるときれいさっぱり忘れている。本当にそれが重要なことであれば、眠りに落ちる前に身体を起こしてメモをすればいいのだが、それも面倒。というわけで、昨夜の夢は夢と消える。
多分巻頭言だった筈だ。小坂先生はよく草花のことを巻頭言や日記に書いておられた。私にはあれは出来ない。わずか二十坪ぐらいの吾が庭園に咲く四季の木や草花の変化は見ていて楽しいが、草の名など家内や娘から何度聞いても脳の中へははいり込まない。脳の前頭葉か側頭葉かとにかくどこかが壊れているのだろう。いや、それ以前に興味の問題か。

最近、探し物が多いので教室の整理を家内と娘に提案された。これをいい機会に本の整理をしようか、と。高い金を払って一度も見ていない本が山ほどある。じゃんじゃん廃棄の方へ。不要になった本や文鎮などは教室で「ご自由にお持ち帰りください」と。多分今から勉強する気は起きないだろう、今まで詰め込んだ知識なるものも僅かなもの。これだけでごまかしごまかし、このままゆかざるを得ないだろう。ふと思った。たったの五十年間で世の中これだけ変わってしまった。あと五十年したら百年したらわれわれ爺さんどもは想像もつかない世界になっていそうだ。
天変地異を人間の力で減らせますかな。温暖化は?世界の人口増を抑えられますかな。戦争のない世の中を作れますかな。なんでもかんでも機械でやるよう工夫するのはいけません。もう一つ言いにくいことを —- すべての病気を治してしまってはいけません。

多分こんな事を夢の中で考えていたのだろう。

江口大象(書源2017年1月号より)

 
   

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