〝アレ〟

川﨑　大開（2024年3号）

SMBC日本シリーズ2023において１１月５日の第７戦で阪神がオリックスを破り、1985年以来、３８年ぶり２度目の日本一に輝いた。私は熱烈な阪神ファンではないが、関西対決ということもあり楽しく観戦させていただいた。妻はいつの間にか熱烈な阪神ファンとなっており、家には阪神応援グッズが揃い、大荷物で甲子園に行くのが常であった。

今ではこうした熱烈な阪神ファンが大勢いるが、阪神の人気が本格的に高まりだしたのは８０年代からと聞く。もちろん８５年の日本シリーズ制覇で熱気は最高潮を迎えた。過去を振り返ってみれば、９０年代には“ダメ虎”と言われた時代もあった。試合後、「やっぱり負けた」と言葉に出たことが思い出させる。

それが昨年の阪神はどうだったか。本当に強かった。監督が掲げた“アレ”に向かい、チーム一丸となってリーグを戦った。日々の練習の成果であったろうし、監督を、スタッフを、そして何よりチームメイトを信頼し尊重しあった精神が他球団より勝っていたといえるのではなかろうか。

阪神の４番大山選手はひたむきに練習に打ち込み、シーズン中は全体練習前にスコアラーの下に行き、しっかりと情報収集をして打席に立ったという。日々の努力、試合に向かう姿勢が他の選手の手本となり、厚い信頼を受けた。「大山さんが打てなきゃ誰もが仕方がないと思える」とチームメイトに言わしめるまでの絶大なる信頼を勝ち得た。日々のたゆまぬ努力、姿勢が実を結んだのである。

よく弟子からも、錬成会に参加させていただいた折も、どうすれば書が上手くなるか、と聞かれる。そんなのが分かっていれば私が真っ先にやっていますよ、笑って答えるのだが、“日々のたゆまぬ努力”以外にはない。そして“情報収集”をすること。常にアンテナを張り、チョットとしたことも聞き逃さない、見逃さない心構えが必要と考える。

新年を迎え、誰しもが今年一年の大きな目標を立てたであろう。この一年、個々の目標“アレ”が達成できるよう、しっかりと書に取り組んでいきましょう。